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名古屋地方裁判所 平成2年(ワ)1442号 判決 1992年10月16日

原告

山田和子

ほか二名

被告

栗原次郎

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告山田和子に対し金八四万三三〇〇円、原告山田豊に対し金一五万六六八九円、原告山田郊美に対し金七万円及びこれらに対する平成元年一月一七日から各支払ずみまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告らの、その余を被告らの負担とする。

四  この判決第一項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、連帯して、原告和子に対し、九七三万一八二〇円、原告豊に対し四九万一八七五円、原告郊美に対し二〇万円及びこれらに対する本件事故発生の日の翌日である平成元年一月一七日から各支払ずみまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

第二事件の概要

本件は、原告らが左記一1の交通事故の発生を原因として、被告栗原に対し民法七〇九条に基づき、被告会社に対し自賠法三条に基づき、それぞれ損害賠償を請求する事案である。

一  争いのない事実

1  本件事故の発生

(一) 日時 平成元年一月一六日午後一〇時四〇分ころ

(二) 場所 尾張旭市東大久手町一丁目一一―一五先交差点付近

(三) 加害車両 被告栗原運転・被告会社所有の普通乗用自動車

(四) 被害車両 原告豊運転・原告和子及び原告郊美同乗の普通乗用自動車

(五) 態様 右折のため停止中の被害車両に加害車両が追突

2  責任原因

被告栗原は、前方不注視の過失で本件事故を発生させた。

被告会社は、加害車両を自己のために運行の用に供するものである。

3  損害(一部)

(一) 原告豊の治療費(ただし平成元年一月一七日から二六日までの分) 三万一〇二〇円

(二) 原告郊美の治療費 二万六二六〇円

4  損害の填補(一部)

(一) 原告和子は、本件請求の損害に対し、被告から治療費等として一七一万二四五〇円、自賠責保険から七五万円の支払を受けた(甲二〇、乙一三、乙一五ないし乙一七、弁論の全趣旨)。

(二) 原告豊及び原告郊美は、被告からそれぞれ治療費三万一〇二〇円及び同二万六二六〇円の支払を受けた。

5  傷病手当金の交付

原告和子は、名古屋北社会保険事務所から健康保険法に基づく傷病手当金一一七万三六九〇円の交付を受けた。

二  争点

本件の主たる争点は、事故後の原告和子の症状と本件事故との因果関係及びこれによる労働能力の喪失の割合である。

1  原告和子の主張

(一) 現在原告和子には、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級一二級一二号に該当する頚椎神経根症状及びバレー・ルー症候群がある。この障害のため、原告和子が、それまで勤務していた会社を退職しなければならなかつたことも考慮すれば、その労働能力の喪失率は二五パーセントを下らない。

(二) 左記2(二)(三)の主張は争う。

2  被告らの主張

(一) 右1(一)の主張は争う。原告和子の現在の症状は、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級一四級一〇号に該当する程度のものである。

(二) また、本件事故後の原告和子の症状には、心因的要因(神経症、自律神経失調症)及び身体的要因(頚椎の経年変化)が寄与しており、これらを考慮すれば、損害額の四ないし六割を減額すべきである。

(三) 原告和子に支払われた右一5の傷病手当金も損害の填補として扱われるべきである。

第三争点に対する判断

一  原告和子の症状及び後遺障害の程度並びに本件事故との因果関係

1  本件事故前の健康状態等

乙一の一、乙二、乙三、乙六、乙七(二三頁)、証人町田元實、原告和子本人によれば、以下の事実が認められ、原告和子の供述中のこの認定に反する部分は、その他の右各証拠に照らし容易に採用できない。

(一) 原告は、昭和一八年一二月三日生まれの女性であるが、<1>昭和六一年山口病院で心臓病の一種であるアダムス・ストークス症候群及び慢性関節リユーマチ様の症状と診断され、同年七月から昭和六二年一月まで同病院に入院し、<2>昭和六三年七月には狭心症、<3>同年一〇月には神経症とそれぞれ診断されて同病院に通院して治療を受けた。

(二) 右のうちアダムス・ストークス症候群に関しては、徐脈・眩暈・全身倦怠感・失神様発作のほか、胸部痛などの狭心症様の症状もあつたところ、原告和子は、昭和六三年七月胸部不快感、胸部痛、頭痛を強く訴えて、右のとおり狭心症と診断され、以上の症状が本件事故発生後まで継続していた。また、慢性関節リユーマチ様の症状に関しては、四肢の関節痛・歩行障害・両手指の脱力感などの症状があつて、昭和六三年四月ころまで継続していた。

これらの疾病のため、原告和子は、右入院期間中のほか、カルテ上判明するだけでも昭和六二年七月ないし一二月にかけて当時の勤務先での労務が不能と診断され、これに基づいて健康保険法上の傷病手当金の請求をしていた。

(三) ところで、担当医師の意見では、原告和子には自律神経失調症状があり、これがアダムス・ストークス症候群の発作を増強させており、また狭心症と診断された前示胸部不快感等も、心電図上異常がなく、いわゆる精神身体的症状とも考えられる状態であつたところ、原告和子は、昭和六三年一〇月ころから胸部不快感・食欲不振を強く訴え、ついては体重の著しい減少をきたしたため、担当医師から心因性反応と判断され、前示のとおり神経症の状態と診断され、精神神経用剤等の投与を受けた。

また、原告和子は、昭和六二年七月ころ両腕の痺れ等を訴えたことがあつたが、両腕の知覚・運動障害もないなど、主訴と他覚所見とが一致せず、心因的なものである可能性があつた。

そのほか、同原告の前示関節痛や眩暈・両腕の痺れ等の症状は、職場への復帰の際など自己の積極的な関与が必要となる際によく出てくることが、担当医師により観察されている。

2  原告和子の受傷及び治療経過等

甲二の一ないし一二、甲三の一・二、甲四ないし甲八、甲九の一、甲一五、甲二〇、甲二一、甲二六、甲二七、乙一の一ないし一二、乙七ないし乙一一、乙一三ないし乙一七、乙一九の四ないし一五、乙二一の四ないし九、証人伊藤不二夫、原告和子本人によれば、以下の事実が認められ、事故時の加害車両の速度について、この認定に反する原告和子の供述部分は、甲二の二ないし四・八に照らし直ちに採用できない。

(一) 原告和子は、本件事故当時、被害車両助手席に同乗していたが、同車が停止しているところに、後方から時速約四〇キロメートルで走行してきたわき見運転の加害車両に追突され、頭頚部・背部挫傷、右足関節捻挫の傷害を負つた。

(二) 原告和子は、<1>本件事故翌日の平成元年一月一七日可知整形外科病院で診断を受け頚椎挫傷と診断され、同月一八日も通院したのち、翌一九及び二〇日同病院に入院してすぐ退院し、<2>同二〇日公立陶生病院に一日だけ通院して、頚椎捻挫、背部挫傷、右足関節捻挫のほか、左第八頚髄神経損傷の疑いと診断され、<3>続いて山口病院に転医し、ほぼ同様の傷病と診断され、同月二〇日から同年四月一五日まで八六日間同病院に入院し、更に同月一六日から平成二年七月二四日まで同病院に通院して治療を受け(通院実日数二四四日間)、同日症状固定と診断された。

(三) そのほか右各傷病以外に、原告和子は、本件事故直前の平成元年一月五日から再び山口病院で狭心症の治療を受けるようになつており、また事故後の同年二月二〇日には乳腺症、同月二八日には頚部椎間板症、同年三月二七日には右肘関節打撲症、同年六月一二日には膀胱炎、同年七月二五日には頚椎骨軟骨症と診断され、いずれも同病院での治療が継続された。

(四) 原告和子は、平成元年一月一七日からの可知整形外科病院での右診察時、嘔気、眩暈、頭痛、肩凝等を訴え、他覚的には神経根症状があり、前示のとおり同月一九日同病院に入院したが、翌二〇日自己の判断で右病院を退院した。

次いで原告和子は、公立陶生病院で診断を受け、頚部の運動性はほぼ正常と診断され、X線撮影検査でも第六・七頚椎症が認められた以外骨折等の異常は認められなかつたものの、頸部痛、左肩甲骨部圧痛、左上肢の脱力感、左第八頚髄神経領域の知覚鈍麻等を訴え、強く入院を希望し、その結果山口病院を受診することになつた。

(五) そして、原告和子は、同一月二〇日山口病院における前示初診時に、頭頚部痛、左肩甲骨部・右足関節部の痛みを訴え、左前腕から小指にかけて尺骨側の知覚鈍麻も認められて、頭頚部・背部挫傷、右足関節捻挫と診断されたほか、左第八頚髄神経損傷の疑いがあるとして入院することになつたが、腱反射は正常で、病的反射もなく、前示知覚鈍麻以外の明確な神経学的異常所見は認められない状態であつた。

原告和子は、右入院期間中、全身倦怠感、頭頚部痛、左肩痛、頭重感、左手尺骨側の痺れ感等を訴え、これらの症状に対し頚部カラーの装着、鎮痛解熱剤や鎮静剤等の投与・点滴等の治療を受けた。また同年二月六日の握力測定では、左手の握力が低下しているのが判明した。そのほか同年三月一七日ころから「物が見にくい。」と訴えるようになり、眼科での検査の結果、老眼及び近視性乱視によるものと診断された。

そして、同年四月一五日症状が改善したと判定されて、同病院を退院した。

(六) その後原告和子は、前示のとおり、同四月一六日から同山口病院へ通院し、入院中と同様の症状のほか、肩関節の挙上困難や頚部左回旋運動の困難を訴え、主として理学療法や鎮痛剤の投与等の治療を受けたが、症状の改善ははかばかしくなかつた。そのほか、同月二一日には頭痛を訴えて、その症状から自律神経失調症ではないかとの診断を受けている。

そして、原告和子は、平成二年七月二四日山口病院で症状固定と診断されたが、その際<1>自覚症状として、左眼痛、後頭部痛、頚部伸展不充分、左手握力低下、後背部痛、左小指知覚鈍麻を訴え、<2>他覚的には、スパーリングテストで左が陽性で、左第八頚髄神経領域の知覚鈍麻及び左母指球の筋萎縮が認められた。そして頚椎部の運動は、後屈が〇度、左屈及び回旋がいずれも三〇度と制限があり、左手の握力低下(四キログラム、右は二九キログラム)や左眼の視力低下(〇・一。右眼は一・〇)も認められたほか、X線撮影検査では第七頚椎・第一胸椎間の椎間孔の狭小化も認められた。

(七) そのほか、原告和子は、平成元年六月愛知医科大学病院でMRI検査を受け、<1>第四頚椎に退行性変化が認められたが、現在これ以外にも、同原告の頚部には、<2>前示第七頚椎・第一胸椎間の椎間孔の狭小化のほか、<3>第六・七頚椎間の椎間孔の狭小化、<4>第五ないし第七頚椎の椎間板の軽度膨隆など、一連の退行性変化が認められる。

なお原告和子が平成二年四月山口病院で受けたCT撮影検査では、脳内に異常は認められなかつた。

3  当裁判所の判断

(一) 前示1、2認定の各事実のほか、甲一八の一・二、証人町田元實(特に同証人速記録一四頁)、証人伊藤不二夫(特に同証人速記録三三頁以下、三八頁)によれば、<1>もともと原告和子の頚部には、前示2(七)認定のような一連の退行性変化が存在していたところ、これに本件事故による衝撃が加わつて主として神経根症状が引き起こされ、更にバレー・ルー症候群が作用して、前示認定の原告の事故後の諸症状が発現したものであるが、<2>他方原告和子には、前示1(三)、2(六)のように、主として性格に由来する特異な心因的要因や神経的要素があつたため、右諸症状は、通常の場合に比較して、その程度や継続する期間等が、相当に増大ないし複雑化したりあるいは遷延する結果になつたものと認められる。

(二) そして、前示1(二)、2(三)認定の各事実、証人町田元實(特に同証人速記録二八頁以下)のほか、乙一の一ないし七・九ないし一二から認定ないし推認されるとおり、本件事故後の山口病院における入通院治療費の相当部分を、前示2(三)認定の本件事故と無関係な疾病の治療費が占めていることを総合すれば、本件事故後の同原告の休業の相当部分は、右疾病を原因とするものであり、また山口病院における前示入院は、本件事故の傷病を治療するためだけであれば、より短期間で終了したものと推認することができる。

したがつて、まず右事情に基づき、本件事故と無関係な右疾病の影響を排除し、更に前示認定の受傷部位・内容、治療の経過等を総合するとすれば、後示休業損害の認定に当たつては、本件事故後原告和子が喪失した労働能力のうち、本件事故との因果関係を肯定できる部分の割合を(次々項で控除する心因的要因の分を含めて)、<1>本件事故の翌日である平成元年一月一七日から山口病院から退院した同年四月一五日までの八九日間につき平均六〇パーセント、<2>翌四月一六日から症状固定した平成二年七月二四日までの四六五日間につき平均三〇パーセントと認めるのが相当である。

(三) また、症状固定時の原告和子の前示症状の内容、特にスパーリングテストの結果、左母指の筋萎縮など神経学的所見と認めるべき症状の存在を考慮すれば、同原告の後遺障害は(次項で控除する心因的要因の分を含めて)、自賠法施行令二条別表後遺障害別等級一二級一二号所定の頑固な神経症状と同程度のものと考えられるから、後示の後遺障害逸失利益の認定に当たつて、同原告は、症状固定時から四年間にわたり労働能力の一四パーセントを喪失したものと認定するのが相当である。

(四) 更に、前示(一)<2>認定の事情によれば、本件事故による原告和子の損害の拡大には、同原告の心因的要因ないし神経症的要素が寄与しているというのが相当であるから、過失相殺の法理を類推適用したうえ、前示認定の治療経過、心因的要因の内容のほか、証人伊藤不二夫の証言(特に同証人速記録三八頁)を考慮して、原告和子の弁護士費用を除く全損害のうち三五パーセントを被告らに負担させないこととする。

(五) 以上の認定に対し、原告和子は、本件後遺障害による労働能力の喪失率は二五パーセントを下らないと主張し、その供述中には、<1>現在左腕がほとんど使えないので、料理以外の家事の大半が不可能である、<2>視力は、左眼が〇・一、右眼が〇・二に低下している、<3>左足も二、三センチメートル短縮した、<4>従来の勤務先に復帰しようとしたが、立つていられず、頭痛や体の震えもあつて結局退職した等と右主張に沿う部分があるほか、甲一六にも同趣旨の記載がある。

しかしながら、まず右<2>の右眼の視力低下や<3>の左足の短縮については、これを裏付ける診断書等がない。そして、それ以外の右供述内容も、前示1認定の狭心症、アダムス・ストークス症候群ないし慢性関節リユーマチ様の症状等の存在並びに前示2(五)認定の老眼及び近視性乱視との診断結果を考慮すれば、全部が本件事故の後遺障害によるものといえるか疑問があるばかりでなく、前示認定の後遺障害の内容等に照らせば、その供述するところにはかなりの部分に誇張があると考えられるのである。

したがつて、これらの事情に照らせば、原告和子の右供述等により、直ちに前示認定を左右することはできないといわなければならない。

二  原告和子の損害

1  治療費(請求も同額) 二三万九二八〇円

甲四、甲八、甲二〇、弁論の全趣旨によれば、本件事故後、前示一2(二)<1><3>の期間の可知整形外科病院における治療費及び山口病院における治療費(ただし本件事故による傷病以外の治療費を控除した残額)として右金額を要したものと認められる。

2  入院雑費(請求一〇万四四〇〇円) 六万〇九〇〇円

前示一3(二)認定の事情を考慮すれば、前示一2(二)<1><3>の入院期間合計八七日間の入院雑費として、一日当たり七〇〇円が相当と認められる。

3  通院交通費(請求九八万円) 二九万六四〇〇円

前示一2(二)<1>ないし<3>の通院実日数二四七日間の公共交通機関の利用料金として、一日当たり一二〇〇円が相当と認められる。

これに対し、原告和子は、公共交通機関の利用が事実上不可能であると主張するが、その主張を裏付けるに足りる証拠はない。

4  休業損害(請求三五二万八三七五円) 一五一万九〇九円

甲九の一ないし三、甲二一、原告和子本人によれば、同原告は、昭和一八年一二月三日生まれで本件事故当時四五歳の女性で、主婦として家事をこなすほか、株式会社ベビーシヨツプバンビに販売員として勤務していたが、本件事故後同社に復帰することなく退職したものと認められる。

したがつて、本件事故の翌日の平成元年一月一七日から症状固定した平成二年七月二四日までの同原告の休業損害は、本件事故の年である平成元年度の賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計の四五ないし四九歳の女子労働者の平均年間給与額二八五万八九〇〇円を基礎として推計するのが相当であり、これに前示一3(二)認定の労働能力の喪失状況を当てはめて計算すると、次のとおり一五一万〇九〇九円となる。

2,858,900÷365×(0.6×89+0.3×465)=1,510,909

5  入院慰謝料(請求二五〇万円) 一六〇万円

前示認定の受傷部位・程度、入通院期間、治療経過のほか、前示一3(二)認定の事情も考慮すれば、右金額が相当である。

6  後遺障害逸失利益(請求四〇一万六一四五円) 一四五万八一一八円

甲一五、原告和子本人によれば、同原告は、症状固定した平成二年七月二四日当時四六歳であつたから、その逸失利益は、右平成二年度の賃金センサス第一巻第一表産業計・企業規模計・学歴計の四五ないし四九歳の女子労働者の平均年間給与額三〇五万二五〇〇円を基礎として推計するのが相当であり、これに前示一3(三)認定の労働能力の喪失状況を当てはめ、年五分の割合による新ホフマン係数を使用して本件事故時の現価に引き直すと、次のとおり一四五万八一一八円となる。

3,0252,500×0.14×(4.3643-0.9523)=1,458,118

7  後遺障害慰謝料(請求一五〇万円) 一六〇万円

本件事故の態様・結果、前示認定の後遺障害の程度等を考慮すれば、右金額が相当である。

8  心因的要因による減額及び損害の填補

(一) 以上の損害の合計は、六七六万五六〇七円であるところ、乙一四によれば、このほか前示一2(二)<2>の公立陶生病院における治療費として二万三四四〇円を要したことが認められるから、これを加えると、本件事故による原告和子の損害の総額は、六七八万九〇四七円となる。

そこで、心因的要素に基づく減額として、前示一3(四)の認定にしたがい、その三五パーセントを控除すると、残額は四四一万二八八〇円となる。

6,789,047×(1-0.35)=4,412,880

(二) 他方、前示争いのない事実のとおり、原告和子は、<1>被告から本件請求の損害に対し治療費等一七一万二四五〇円、自賠責保険から保険金七五万円の支払を受けており、<2>名古屋北社会保険事務所から健康保険法に基づく傷病手当金一一七万三六九〇円の交付を受けているほか、<3>乙一四、弁論の全趣旨も治療が必要だつたと主張し、甲二三にはこれに沿う記載があるが、直ちに本件事故との因果関係を認めることはできない。

(二) 原告豊が請求している、右平成元年一月一七日から二六日までの治療費が前示請求額と同一金額であること及び被告がこれを全額支払ずみであることは当事者間に争いがない。

2 休業損害(請求九万一八七五円) 八万六六八九円

甲一四、甲一七、原告豊によれば、同原告は、本件事故の当時株式会社ハートエツチ商会に勤務しており、平成元年中合計三九五万五一九二円の給与の支払を受けていたところ、本件事故のため平成元年一月一七日から二四日まで八日間同社を欠勤し、この間年次有給休暇扱いとされて、その分の有給休暇取得権を喪失したと認められる。

したがつて、右給与額を基礎として、原告豊の右期間中の休業損害を計算すると、次のとおり八万六六八九円となる。

3,955,192÷365×8=86,689

3 慰謝料(請求四〇万円) 七万円

本件事故の態様・結果、前示認定の治療期間・経過等を考慮すれば、右金額が相当である。なお、原告豊は、後遺障害がある旨主張するが、賠償を必要とする程度の障害が残存していることを認めるに足りる証拠はない。

4 以上合計 一五万六六八九円

四  原告郊美の損害

1  治療費(請求二万六二六〇円) 差引〇円

甲一二、甲一三によれば、原告郊美は、本件事故により頚椎挫傷の傷害を負い、嘔気、肩背部筋痛を訴えて、平成元年一月一七日から二〇日まで可知整形外科病院へ通院したことが認められる(通院実日数四日間)。

右治療費が前示請求額と同金額であること及び被告がこれを全額支払ずみであることは当事者間に争いがない。

2  慰謝料(請求二〇万円) 七万円

本件事故の態様・結果、前示認定の治療期間・経過のほか、本件事故が大学受験の直前だったこと等も考慮すれば、右金額が相当である。

五  結論

以上の次第で、原告らの請求は、被告らに対し、連帯して、原告和子が前示損害合計八四万三三〇〇円の、原告豊が前示損害合計一五万六六八九円の、原告郊美が右慰謝料七万円の各賠償及びこれらに対する本件事故発生の翌日である平成元年一月一七日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 夏目明徳)

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